I'ROM GROUP

  • ごあいさつ
  • 会社概要
  • 主な提携先
  • 最新情報
  • プレスリリース
  • お問い合わせ
  • リンク

嚢胞性線維症の遺伝子治療

嚢胞性線維症(cystic fibrosis)は日本では非常にまれですが、白人には比較的良く見られる常染色体劣勢遺伝の疾患で、全身の外分泌腺臓器の異常により呼吸器や消化器が障害され、最終的には死に至る非常に重篤な疾患です。気道上皮細胞のCFTR(cystic fibrosis transmenbrane conductance regulator)というATP依存性クロライドイオンチャンネル分子の異常がその原因です。全身性の疾患ですが、水分代謝の異常によって引き起こされる気道障害(呼吸困難、感染症)が患者の主要な死因です。発症率もきわめて高く(新生児の2〜3千分の1)、成人に達するまでに多くの患者が亡くなります。根本的治療法は存在せず、気道粘液分解、抗生物質などの対象療法があるのみです。患者の数は世界で6万人と言われています。

従って、欧米においては嚢胞性線維症は遺伝子治療の最重要標的疾患の一つであります。しかし、精力的な研究にも関わらず既存ベクターは気道上皮への遺伝子導入を行えないことが判明し、遺伝子治療的アプローチも暗礁に乗り上げておりました。

背景と英国コンソーシアムとの共同開発

ところが、英国インペリアルカレッジ(ロンドン)の当社との共同研究により、センダイウイルスベクターは気道上皮細胞に高効率に遺伝子導入をすること、しかも厚い粘液層の影響をほとんど受けることなく apical 側(呼気、吸気側)から遺伝子導入を果たし得ることが示され、俄然当社のベクター技術が注目を浴びることになりました。

この事実に基づき、センダイウイルスベクターと、センダイウイルスのF、HNを用いた当社の新規シュウドタイプSIVベクターによる研究に関して、世界的に権威のある「英国 Cystic fibrosis (CF) 遺伝子治療コンソーシアム」(ロンドン大学、オックスフォード大学、エジンバラ大学の共同運営体)から共同開発が申し込まれました。同コンソーシアムから当社は毎年グラントを獲得するとともに、原因遺伝子 CFTR を搭載したベクターを供給し、コンソーシアムでin vitro、in vivo評価を行う体制が出来上がりました。

センダイウイルスベクターを用いた前臨床研究

試験管内で細胞を用いた評価試験はインペリアルカレッジで実施されました。センダイウイルスベクターは遺伝子発現レベルが高いのでCFTRの過剰発現による細胞障害性が高く、むしろわざわざ「低遺伝子発現型」センダイウイルスベクターを使う必要がありました。CFTR機能が欠損した細胞に同遺伝子を導入したところ、既存ベクターでは達成できなかった治療に十分なレベルのクロライドイオンのチャンネル活性の回復をもたらすことに成功しました。

動物での評価はエジンバラ大学でヒツジを用いて行われています。カテーテルを用いてマーカー遺伝子(lacZ)を搭載したセンダイウイルスベクターの肺投与を行ったところ、細気管支などへの強力な遺伝子導入が観察されました。特にCF遺伝子治療での標的器官である粘膜下腺への強い遺伝子導入が確認されたことは重要です。投与後のヒツジの1年以上の長期観察によっても特段の安全性の問題は指摘されていません。本ベクターの長期安全性が大型動物によっても証明されたことになります。今後、ヒツジを用いる前臨床研究のプロトコール設計と、下記c.のF/HN型新シュウドタイプSIVベクターの評価試験が進行する予定です。

F/HN型SIVベクターを用いた前臨床研究

当社が開発した、センダイウイルスの殻タンパクF、HNをもつSIVベクターは、従来のレンチウイルスベクターが不可能であった気道上皮細胞への遺伝子導入を容易に果たすことが判明しています。さらに当社の検討によって、その遺伝子発現は1年以上に安定して持続することが示されました。気道上皮細胞の寿命は3ヶ月と言われていますので、このことは当社ベクターにより気道上皮細胞の幹細胞に遺伝子導入されていることを強く示唆しています。遺伝性の疾患の治療のためには重要なメリットですので、現在、英国コンソーシアムと共同で評価作業を強化、推進しています。

F/HN型SIVベクターによるマウス鼻孔上皮細胞での長期遺伝子発現
  1. 適応疾患

    嚢胞性線維症

  2. 作用機序

    嚢胞性線維症はコーカサス人に多い劣性遺伝の致死性疾患ですが、原因遺伝子としてCFTR遺伝子が同定されています。このCFTR遺伝子をセンダイウイルスベクターあるいはF/HN型SIVベクターを用いて肺および気管上皮細胞に導入し、患者の遺伝的変異を受けたCFTRの機能を補います。それによって、本病態の死因の主なものである呼吸障害と感染症の発生を予防します。